先日、友人と好きだった絵本の話になり、わたしは『めっきらもっきら どおん どん』を挙げた。話していると懐かしくなり、読み直してみた。そして確信した。自分の中で、この絵本は異世界トリップものの原点にして頂点であると。テンポのよさ、魅力のあるキャラクター、ほんのりと寂しさを誘うラスト。短い話の中に、真似したいと思う点が次々と見つかる。
まず、テンポのよさである。この絵本は、(起)異世界へ行く→(承)3体の妖怪と出会う→(転・結)現実世界へ帰ってくる といった話なのだが、驚いたのは「起」にあたる部分の短さだ。物語をつくるとき、「起」の前の部分を考えすぎなのかもしれない、と気づかされた。「起」が起こるためにはこんなことがあって、それが起こるのはこんなことがあったからで、・・・といった具合に。もちろん、内容に深みを出すためにはそういったことを考えるのは重要だと思うのだが、それを実際に描くのかどうか、描くとしたらどのタイミングでどのように描くのか、よくよく吟味しなければならない。
次にキャラクター。妖怪たちのビジュアルは、たとえばディズニーやサンリオのキャラクターのように、いかにも子ども受けしそうなものではない。それでもわたしは、小さい頃「こいつら、なんかかわいいな」と思った記憶がある。マスコット的な愛らしさや複雑な心理描写などなくとも、チラリと見える人懐っこさに心を掴まれたのだと思う。
そしてラスト。妖怪たちとの別れは、予想はできていてもやはり寂しい。寂しいと感じるのは、妖怪たちに魅力があること、そして異世界での出来事が楽しそうにえがかれていることの証左だ。いわゆる「タイトル回収」的な要素もあり、美しい終わり方である。
あと、うまそうなもちも出てくる。グルメ要素までクリアしている。完璧だ。
絵本は、大人向けの小説や映画よりも、人の心を捉えるしかけを抽出しやすい気がするので、今後も折を見てベストセラー作品に触れてゆきたい。




